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ひでの歩み


幼少の頃、親戚が経営する定食屋で食べたカツ重が、今でも忘れられません。
心から「おいしい」ということに感動した、初めての経験だったからです。

お客さんと気さくに話し、手際の良い仕事をし、店全体の空気を心地よいものへと導くプロが、そこにはいました。自身が感じるこの心地よさは、決して親族だから、と言うわけではないと、幼心ながらに理解しました。
その時、ただ「カッコイイ」と思ったのです。


元々人の笑顔を見るのが好きでした。
二十歳のころは営業職に従事し、人と接する機会も多かったのですが、なかなか商品は売れず、苦心することもありました。
しかしそこで相手の立場を思ってこそ買って頂けるということを学びました。

その後、かねてより興味があった築地青果市場の卸会社に転職し、野菜の知識や見分け方を学びました。
しかしそこを退社後、次の勤務地で骨折に見舞われ、入院。
短期間ですが働くことができなくなりました。

退院後実家に戻り、居酒屋で働き始めるも、毎日目的もなくただ働くだけの日が続きました。心は無為のままでした。
そんな折、見かねた父から「今すぐ出て行け」と一喝さました。
その時はただただ悔しくて、実家を出ました。

そして本気でなにかしようと決意した時、自分の夢がはっきりと見えました。
やはり、小さいころに見た、おじさんの店でした。
あまり強い方ではありませんが、酒が好きだったこともあり、自分の思い描く形で「居酒屋」というものを作ろうと決意しました。
それからの七年間は、あっという間でした。
修行先の居酒屋で、料理の仕込みから料理まで、ひとつひとつ勉強して調理師免許、きき酒師、野菜ソムリエの免許を取得。
同時進行で独立の準備も行い、未熟ながらも店をオープンしました。

しかし、その時にはすでに父は他界して、この世にはいませんでした。
母にきいた話によると、父は店ができるのをずっと楽しみにしていてくれたそうです。
いきなりのことだったので、ありがとうの一言も言うことはできませんでした。
わたしに対して口数は少なかった父ですが ここまで導いてくれたのは紛れもなく父でした
そして、母には お手伝いなど色々な事で支えてもらいました。


オープンまでの道のりは決して平坦なものではありませんでしたが、やってよかったなと思います。
親切な大家さんや仕入れ業者さんに恵まれ、店のスタッフはいつも大変な仕事を嫌な顔一つせず
明るく頑張ってくれます。
そしてなによりも、ひでを応援して下さるお客様に、最大の感謝をしております。

私の目指す店は、お客様とスタッフに心から満足、感動して頂けるような、
「また必ず行きたい店」「ここで働いて成長した」と思ってもらえるような、そんな店です。
また、「西荻窪と言えば『ひで』」と言って頂けるように、これからも日々努力して参ります。

長い文章となりましたが、最後までお読みくださいり、ありがとうございました。
今後ともどうぞ『ひで』を宜しくお願い致します。


 

店主 新井英之

 

 

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